この記事は,数学オリンピックについて名前しか知らない人に向けて,数学オリンピックがどのようなものか,挑戦するには何をすればいいのかを簡単に解説する記事です.
数学オリンピックには,何かと「天才でないと太刀打ちできない」というイメージがついてまわっている印象ですが,実際にはそうではありません.初めは「こんなの無理だろ」と思っていた問題でも,適切な努力を積めば確実に解けるようになっていきます.
数学オリンピックに限らず何についても言えることですが,非常に秀でた人はいるものです.しかしそういう人でないと楽しめないかと言うと,そうではありません.自分が成長する過程それ自体が楽しいものなのです.
Q. 数学オリンピックとは?
まず,最高峰の大会が国際数学オリンピック(IMO)です.高校生以下を対象としています.毎年7月に,様々な国で開催されます.2023年は日本,2022年はノルウェーでした.2024年はイギリス,2025年はオーストラリアの予定です.世界各国から最大6人の代表が送られます.
また,国ごとに行われる数学オリンピックもあります.日本では,高校生以下を対象とする日本数学オリンピック(JMO),中学生以下を対象とする日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)が開催されています.それぞれ予選・本選があり,本選で入賞した人は代表選考合宿に参加できます.そこでの上位6人がIMOに参加できます.
詳細はごちすうの次の記事をご覧ください.数学オリンピックの1年間
なお,数学オリンピック財団以外が開催している数学の大会もいくつかあります.中学生を対象とする広中杯はその一つです.OMCなどオンラインで行われる大会もあります.論文のコンテストなど,数学オリンピックとは趣向が異なるものも多くあります.
数学オリンピックのような,短い制限時間内で数学の問題を解く競技は,一般に「競技数学」と呼ばれています.
Q. どんな問題が出題されるの?
出題範囲は基本的に高校範囲までですが,世界の基準と合わせるため,微積分や確率は出題されません.(もちろん解答に使うのは大丈夫です.)
ただし,幾何や整数論,グラフ理論など,より進んだ知識が必要なものもあります.また,関数方程式など数学オリンピック特有のジャンルもあります.ただ,これらの知識は後々身に付ければよいので,今はあまり考えなくても大丈夫です.
JMO予選は3時間で12問,JMO本選は4時間で5問,IMOは「4時間半で3問」が2日間と,試験時間が学校でやるような試験と比べて長いのが特徴です.また誘導はほとんどありません.そのため,試行錯誤して問題を深く考える必要があります.
さっそく問題を見て,雰囲気を感じてみましょう.まずはJMO予選の問題です.12問あるうちの前半の(比較的)簡単な部分からとってみました.「意外とできそうだぞ?」と思っていただけると嬉しいです.
以下の値は有理数である.これを既約分数の形で表せ.
- 石の列を左から順に
個ずつ組にする.各組に対して,その組に属する 個の石を,それらの 個の石のうち多い方の色の石 個に置きかえる.
最初の石の並べ方によらず,最後に残る
次にIMOの問題です.国際大会の問題でも,問1はやってみたら意外とできるかもしれません.とはいえ国際大会ですから骨はあります.
問6はかなりの難問です.この問題で満点を獲得した人は世界で6人しかいませんでした( http://www.imo-official.org/year_statistics.aspx?year=2023 参照).
次の条件をみたす合成数
のすべての正の約数 を, をみたすようにとったとき,任意の に対し が を割り切る.
正三角形
(備考 : 不等辺三角形とは,どの二辺の長さも異なる三角形のことである.)
Q. とりあえず何から手を付ければいい?
まずJMOやJJMOの予選を解いてみましょう.何年分かは後で時間を計って解くために残した方がいいかも!
4〜6問目からは難しい問題が出題されます.最初は全然解けなくても気を落とす必要はありません.
日本語で閲覧でき,問題の質が高いのでおすすめできます.解答・解説のついた問題集も出版されています.Amazon - 数学オリンピック2018-2022
またOMCというものもあります. オンラインで,無料で,毎週コンテストに参加できるのが強みです.
Q. 高校数学を終わらせてからやるべき?
高校数学を知っている方が有利なのは間違いありません.一方で,高校数学に限らず,「○○を終わらせてからやろう」とするよりは,「問題も解きながら,他のことも学びながら,一緒に少しずつ学んでいこう」というスタンスの方が成長するように思います.
最後に
一番大事なことは,楽しむことです.