IMO 2019日本代表によるKIMO 2019の問題および解答を掲載します. (注意:これはジョーク作品です!)
KIMOとは?
KIMO 2019とは, IMO 2019 (イギリス大会) の日本代表6名によって大会期間中に作成され, 翌月のJMO夏季セミナーでお披露目されて話題を呼んだ, 「クソ問・一発ゲー数学オリンピック」です. この記事が一般には初公開となります.
基本的にジョークを目的に作成されたものであるため, あまり深く捉えすぎないようにはくれぐれも注意してください. とはいえ, パロディーを中心にネタの空気が強い前半に対し, 特に後半は純粋に数オリの問題として価値の高いものも含まれており, 一考の価値はあるかもしれません. ただしクソ問と一発ゲーは紙一重, 悩みすぎには注意!
問題・解答
鋭角三角形 $ABC$ があり, その外接円 $\Gamma$ に直線 $l$ が接している. 直線 $l$ に関して直線 $BC, CA, AB$ と対称な直線をそれぞれ $l_a, l_b, l_c$ とする. このとき, $l_a, l_b, l_c$ によって囲まれる三角形の外接円が $\Gamma$ に接することを示せ.
二つの三角形は $l$ について対称であるから, 題意は示された.
参考. IMO 2011 問6
$(1)$ 実数 $a,b,c,d$ に対し $(a^2+b^2)(c^2+d^2)\geq(ac+bd)^2$ を示せ.
$(2)$ $26\geq25$ を示せ.
$(1)$ $({\rm LHS})-({\rm RHS})=(ad-bc)^2\geq 0$ より.
$(2)$ $(1)$ において $(a,b,c,d)=(3,2,1,1)$ とすればよい.
一辺 $1$ の正方形を $5$ 枚つなげて作った下図のような図形 $A,B$ がある. 各図形は回転させたり裏返したりしてもよい.
$(1)$ 図形 $A$ だけで $2019\times2019$ の正方形を隙間なく敷き詰めることは可能か.
$(2)$ 図形 $B$ だけで $n\times n$ の正方形を隙間なく敷き詰めることが可能な正の整数 $n$ をすべて求めよ.
$(1)$ $2019^2$ は $5$ の倍数でないから不可能である.
$(2)$ 角を埋められないため, そのような $n$ は存在しない.
参考. 図形 $A$ だけで $n\times n$ の正方形を隙間なく敷き詰めることが可能な正の整数 $n$ をすべて求めよ.
$a_1, a_2, …, a_n, k, M$ を正の整数とし, \[a_1+a_2+\cdots+a_n=k,\ \ a_1a_2\cdots a_n=M\] が成り立っているとする. $M>1$ のとき, $x$ についての方程式 \[M(x+k)^n-(x+a_1)(x+a_2)\cdots(x+a_n)=0\] は正の実数解を持たないことを示せ.
$a_i(x+k)\gt x+a_i$ を辺々掛け合わせればよい.
参考. IMO 2017 SLP A1
$2$ 以上の整数 $n$ であって, 次の不等式をみたすものをすべて求めよ. \[ \left\lfloor\dfrac{n}{1}\right\rfloor+\left\lfloor\dfrac{n}{2}\right\rfloor+…+\left\lfloor\dfrac{n}{n}\right\rfloor\geq\left\lceil\dfrac{n}{1}\right\rceil+\left\lceil\dfrac{n}{2}\right\rceil+…+\left\lceil\dfrac{n}{n-1}\right\rceil \]
$i\mid n$ のとき \[\left\lfloor\dfrac{n}{i}\right\rfloor=\left\lceil\dfrac{n}{i}\right\rceil\] であり, そうでないとき \[\left\lfloor\dfrac{n}{i}\right\rfloor+1=\left\lceil\dfrac{n}{i}\right\rceil\] である. ここで \[\left\lfloor\dfrac{n}{n-1}\right\rfloor+\left\lfloor\dfrac{n}{n}\right\rfloor=\left\lceil\dfrac{n}{n-1}\right\rceil\] より, 任意の $1\leq i\leq n-2$ について $i\mid n$ が成り立つことが必要十分であるから, 求める値は $n=2,3,4$ である.
参考. IMO 2018 SLP C3
正の整数 $n$ に対して, $n$ を $2$ 進法で表記してそれを $10$ 進法で読んだ値を $F(n)$ とする. 例えば, \[F(5)=101,\ \ F(17)=10001\] である. $F(n)$ が $n$ の倍数となるような正の整数 $n$ は無数に存在するか.
任意の $2$ べきは明らかに条件をみたすから, 求める $n$ は無数に存在する.
参考. ちなみに $10$ べきでもよい.
黒板に $1$ 以上 $100$ 以下の整数が $1$ つずつ書かれている. 黒板から整数 $a, b$ を選んで消し, 新たに $2a^2-1$ と $2b^2-1$ の最大公約数を書くという操作を繰り返し行う. 黒板に書かれている整数が $1$ つだけになったとき, その整数は平方数であることを示せ.
明らかに $1$ は任意の操作で消えないから, 最後に残る整数は $1=1^2$ である.
参考. JMO 2018 問3
$0$ でない実数 $a_1, a_2, \cdots, a_n$ が $a_1+a_2+\cdots+a_n=0$ をみたすとき, 次の不等式が成立することを示せ. \[\sum_{1\leq i\lt j\leq n}a_ia_j \lt \sum_{1\leq i\lt j\leq n}\frac{1}{a_i^2+a_j^2}\]
$\displaystyle ({\rm LHS})=\frac{1}{2}\left(\left(\sum_{i=1}^n a_i\right)^2-\sum_{i=1}^n a_i^2\right)\lt 0 \lt ({\rm RHS})$ より.
一辺 $1$ の正方形をそれぞれ $5$ 枚, $4$ 枚使って作られた下図のような図形 $S,T$ がある. $2$ 種類の図形をどちらも $1$ 枚以上使って $n\times n$ の正方形を敷き詰めることを考える. ただし, 各図形は回転させたり裏返したりしてもよい.
$(1)$ $n=27$ のとき, このようなことが可能であることを示せ.
$(2)$ $n=28$ のとき, このようなことが可能であることを示せ.
$(3)$ $n=29$ のとき, このようなことは可能か.
$(1)$ $S,T$ を $1$ 枚ずつ組み合わせることで $3\times 3$ のピースができるから, これを敷き詰めればよい.
$(2)$ 角の $12\times 12$ を上述の $3\times 3$ で敷き詰め, 残りを $T$ が $4$ 枚からなる $4\times 4$ のピースで埋めればよい.
$(3)$ 以下のような構成が存在するため, 可能である.
実数からなる数列 $\lbrace{a_k\rbrace}$ は, $a_1=1$ かつ任意の正の整数 $k$ について以下をみたすとする. \[a_k-a_{k+1}=a_ka_{k+1}^2\] このとき, 任意の正の整数 $n$ について, 以下が成り立つことを示せ. \[\dfrac{a_1+a_2+…+a_n}{a_n}\gt 0\]
明らかに常に $a_n\neq 0$ である. 条件より以下が成立するから, 示すべき不等式は $1/a_n^2\gt 0$ であり, これは明らか. \[a_1+a_2+\cdots+a_n=a_1+\left(\frac{1}{a_2}-\frac{1}{a_1}\right)+\cdots+\left(\frac{1}{a_n}-\frac{1}{a_{n-1}}\right)=a_1-\frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_n}=\frac{1}{a_n}\]
一辺 $2019$ の正三角形が一辺 $1$ の正三角形のマス $2019^2$ 個に分けられており, 外周と $2$ 辺を共有するマスのうちちょうど $1$ つに $1$ が, それ以外のマスには $0$ が書かれている. ここで次のような操作を考える.
- あるマスを選び, そこに書かれている数が $a$ であったとき, そのマスに書かれている数を $0$ にして, そのマスと接している全てのマスの数に $a$ を足す.
この操作を有限回繰り返すことで, 全てのマスに書かれた数を偶数にすることは可能か.
一辺 $3$ の正三角形 $S$ に含まれる小三角形 $3^2$ 個のうち, $S$ の外周と $1$ 辺のみを共有する $3$ マスを除いて黒で塗ったものを考える. これを $673^2$ 個敷き詰めたとき, 操作によって偶奇が変化する黒マスは常に偶数個なので, 黒マスに書かれた数の総和の偶奇は変化しない. 初めこれは $1$ であることから, 特にすべてのマスに書かれた数を偶数にすることはできない.
半径 $1$ の円周上の相異なる点 $A_0, A_1, \cdots, A_{2n}$ に対し, ある $0\leq i\lt j\lt k\leq2n$ が存在して, 三角形 $A_iA_jA_k$ の内接円の半径が $1/n$ 未満になることを示せ.
円を幅 $2/n$ の平行線 $n+1$ 本で $n$ 個の領域に区切る (両端の $2$ 本は接線とする). ここで適当に向きを定めて平行線上には点が存在しないようにする. このとき, 鳩の巣原理より同じ領域に存在する $3$ 点がとれ, これが条件をみたす.
参考. もちろんこの問題の評価はstrictではない. $O(n^{-2})$ のオーダーで抑えられるであろう.
黒板に $10$ 個の正の実数 $a_1, a_2, \cdots, a_{10}$ が書かれており, $a_1+a_2+\cdots+a_{10}=10$ をみたしている. 次のような操作を考える. この操作をちょうど $10$ 回行った後, 黒板に書かれている数の中で最大のものを $M$ とする.
- 黒板に書かれている $10$ 個の実数を $2$ つずつ $5$ つの組に分ける. $x$ と $y$ が組になっているとき, それらを消して $x+y$ と $|x-y|$ にすることを, $5$ 組すべてについて行う.
$a_1, a_2, \cdots, a_{10}$ の値や操作の仕方によらず, $M\geq m$ となるような定数 $m$ の最大値を求めよ.
$10$ 回の操作後の数を $b_1, b_2, \cdots, b_{10}$ とする. 黒板に書かれた数の二乗和は操作によって倍になるので, \[10M^2\geq b_1^2+…+b_{10}^2=2^{10}(a_1^2+…+a_{10}^2)\geq 2^{10}\times\dfrac{(a_1+…+a_{10})^2}{10}=10\times 32^2\] 逆に操作 $2$ 回ですべての数を倍にできることから $M=32$ は実現でき, 特に求める $m$ の最大値は $32$ である.
$n$ 次元空間内に超球面 $\Omega$ があり, この超球の外に $n$ 個の点 $A_1, A_2, \cdots, A_n$ がある. このとき, $\Omega$ 上の点 $P$ であって, 次の条件を満たすものが存在することを示せ.
- 任意の $1\leq i\leq n$ について, 線分 $PA_i$ は点 $P$ の他に $\Omega$ との交点を持つ.
各 $A_i$ に対し, 線分 $A_iP$ と $\Omega$ が $P$ 以外の交点を持たないような $\Omega$ 上の点 $P$ の集合は, 超球面をある超平面で切り取った小さい方の部分になる. ここで超球面と中心を共有し半径が十分小さい超球面について, これら $n$ 個の超平面で囲われないことが帰納法で容易に示される. よって, 中心から各超平面と共有点を持たないようにある半直線をとることができ, その半直線と $\Gamma$ との交点が求める点 $P$ である.
直線 $l$ に円 $C_1$ と $C_2$ がそれぞれ異なる点 $A,B$ で接しており, $C_1$ と $C_2$ は外接している. $C_1$ 上に点 $P$, $C_2$上に点 $Q$ があり, $PQ=AB/2$ かつ $PQ//AB$ をみたしている. $AP$ と $BQ$ の交点を $X$ とするとき, $\angle{AXB}$ の大きさとしてあり得るものをすべて求めよ.
二円の接点を $C$ とする. $X$ で反転し, 点 $A$ の移る先を $A’$ などで表すと, 円 $XA’B’, A’C’P’, B’C’Q’$は互いに接しており, $XA’=A’P’$ および $XQ’=Q’B’$ よりこれらの半径は等しい. よって, 三円の中心を結んだ三角形は正三角形であることから, $P$ が弧 $ACP$ 上にあるときは求める角度は $150^\circ$ , そうでないときは $30^\circ$ である.
正の整数の組 $(a,b,c)$ であって, $2^a+5^b-2019^c=200$ をみたすものは存在しないことを示せ.
${\rm mod}\ 31$ で考えればよい.