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JMO予選を6問くらい解けるようになった人へ
更新日:2024-04-30

英語を読もう

問題集や解説記事には英語で書かれたものが多くあります.英語を読むことについてハードルを感じる人は多いと思いますが,実際は,数学の文章特有の言い回しや単語さえ覚えれば大体読めるようになります.

とりあえず読んでみて,わからない部分があればその都度調べるのを繰り返せば,次第に読めるようになっていくでしょう. 英語の文献を読む力は将来ずっと役に立つはずです.

英語のサイトで有用なものをいくつか紹介します.

Art of Problem Solving (AoPS)

URL: https://artofproblemsolving.com/online

右上のCommunity→Contestsで様々な国の数学オリンピックの問題を見ることができます.

各コンテストの難易度・質は様々です.また,国やコンテストごとに独特のクセがある場合があるので,いろいろ手を付けて判断するのが良いと思います.カテゴリーごとにおすすめのコンテストを紹介していきます.

International Contests

IMOやAPMOなど,複数の国で開催されるコンテストが含まれており,平均的に難易度・質ともに高い印象です. 以下で紹介するのはほんの一部です.いろいろ目を通してみると良いでしょう.

National Olympiads

各国で行われる数学オリンピック(日本でいうJMO)がまとめられています.概ねIMOでの成績とコンテストの難易度・質が相関していると思ってよいです.

Team Selection Tests

各国の代表選抜の問題がまとめられています.

IMO Shortlist

URL: http://www.imo-official.org/problems.aspx

上のAoPSで見られるようにたくさんの問題集がありますが,特筆すべきものがIMO Shortlistです.IMOの候補問題集で,そのぶん難易度・質ともに高いです.その次の年の各国のIMO代表選抜にも使われるため,公開されるのはその次のIMOが終わってからとなります.毎年,分野ごとに8問前後の問題が難易度順に載っており,解答も付いています.

Modern Olympiad Number Theory (MONT)

URL: https://artofproblemsolving.com/community/c6h2344755

『船旅』の整数論バージョンと言えるでしょう.

数学オリンピックの整数論に関する本を書きました! この本は,国内および国際数学オリンピックを準備する人のためのものです.本書は,ゼロから始める基礎的な内容から,現代のオリンピックに登場するような高度なトピックまでをカバーしています.

非常に概念的なアプローチをとり,取り上げた各トピックについて深く掘り下げています.本書は,私の脳が整数論をどのように捉えているかを示しています.理論とは別に,私は厳選した解答例(古典的な問題からオリンピックの問題まで)を掲載しました.私が取り上げた解答は動機づけがあり,直感を養うのに役立つでしょう.各章の練習問題は簡単なものから始まり,美しくも非常に難しい問題で終わります.本書で私が気に入っている特徴の1つは(船旅のような)ヒントと解答のシステムです.いくつかの章には「特別セクション」があり,その章に関連した興味深いトピックについて書かれています.問題解決にも役立つかもしれません.

https://artofproblemsolving.com/community/c6h2344755 より翻訳

OTIS excerpts

URL: https://web.evanchen.cc/excerpts.html

『船旅』の著者による,数学オリンピックの幾何以外のテキストです.

Canada IMO Training camp のサイト

URL: https://sites.google.com/site/imocanada/

ページに飛ぶとさっそく有用なサイトのリストが載っていますがそれだけでなく, 左側のメニューから各合宿で使われた資料や問題集を読むことができます.

その他

ここまで比較的長い文献を紹介してきましたが,10ページくらいの解説記事も多く存在します.Evan Chenによる文献リスト (https://web.evanchen.cc/recommend.html) などを見ながら漁っていくと良いでしょう.

「小手先」の一歩先へ

このような段階になってくると,知識やテクニック一発で解ける問題は少なくなってきます.というのも,知識やテクニック一発で解ける問題は多くの人に解かれるからです.また,数学オリンピックはそのような問題を避ける傾向にあるようです.

そこで「知識やテクニック一発の問題が解ける」という段階から一歩前に進む必要があります.

それにはテクニックを一般化する,より俯瞰した目線で考えることが大切です.問題が解けたときや,解答を読んだときに,「どうしてその解法で解けるのか?」を踏み込んで考えることが大切だと思います.(ただ例えば関数方程式には,「なんかわからないけど式変形したら解けた」ということもありますが……)

たくさんの問題に触れないと見えてこないものもあります.量と質が大事です.

競技数学との向き合い方

これは今までの趣向とは異なり,単純に中高生への(人生の?)アドバイスです.

2023年のIMOで金メダルを獲得した北村さんの記事から引用します.

数オリを目指す後輩たちに向けて

嬉しいことに, どうやったら数学ができるようになるかといった質問をよくいただきます. 競技数学に限って言えば, 一番は楽しむこと, もう少し踏み込んだ話をすれば問題や概念の本質を追い求めることだと考えています. 競技数学は受験とは違って, スポーツにもある類の娯楽の側面も大きいです. 楽しめなくなったら距離を置きましょう. そして, 学校行事や部活や, ほかの楽しいことを全力で楽しみましょう. いつかまた競技数学をしたくなったら競技数学を思いっきり楽しみましょう!

中高の6年間において競技数学はほんのただ一つの側面にすぎないわけです. 僕は数オリに参加する一方で兼部をしつつ, 音楽祭と文化祭の実行委員を兼任したりと, 人一倍学校生活も楽しむよう意識してきました. 少し飛躍させて言えば, そういった生活をしたからといって, 数オリにおいて大きなディスアドバンテージとなるといったことはないと思っています.

もちろん, 競技数学において努力の方向性を間違えないことは大前提です. これは先ほど少し話した, 「問題や概念の本質を追い求めること」というのが自分の出した結論です. この問題は結局どこを思いつくのが難しいのか, 何が本質か, どうやったら思いつくか, 面白さはどういうところか, あるいは, この概念はどういうモチベーションで作られたのか, 何に使えるのか, …などなど(定義を正確につかむのはもちろんです). そしてそれをときにはまとめたりしてみる. それが一番の近道だと思います. しっかり触れたわけではないのであまり大きい声では言えないですが, 学問としての数学にも近いところはある気がします.

皆さん一人一人が悔いのない数オリ人生や学校生活を送れるよう陰ながら応援しています!

https://mathlog.info/articles/rfZMiTRxQ4wLSZuMVMz8

また,ごちすうのメンバーでもある平山さんのOMCとどう向き合うべきかという記事も良い記事なので,読むことをお勧めします.

引用だけするのも良くないので,兒玉が言いたいことを書きます.

まだ学生の身分で言うのも何ですが,何事もバランス感が大事なのかなと思います.

例えば数学オリンピックでは,もちろん数オリの問題をゴリゴリ解いていくのが大事ですが,それだけでなく,大学以降で学ぶような数学を勉強してみたり,物理学を勉強したり,プログラミングをやったり…… そういったことが後々数オリに役立つかも役立たないかもしれませんし,それによって数オリの能力を他のことに役立たせられるかもしれません.

目標が数学オリンピックだけであっても,個人的には「急がば回れ」,つまり興味の幅を広げて,数オリへ多角的な見方ができるようになることが大事だと考えています. 中高生のうちに興味のアンテナを増やすことは,後々そういった話題に出くわしたとき,理解のきっかけになるという意味でも,大事だと思います.

ではどうやって興味の幅を広げるのかというと,偶然性を使うのが良いのかなと思います.読んでいる資料に載っている発展的な数学の内容だったり,友達や先生から聞いた面白い(数学に限らない)だったり,本屋や図書館でつい目に留まった内容だったりがあると思います.それらに興味を持ち,自分から調べてみる心がけをしていくと良いと思います.意外と数オリだけやってても,そういう心がけを持つだけでいい感じになるのかもしれません.

とはいえいろいろ手を付けてどれも中途半端ということにもなりかねないので,結局バランス感という感じになるんですかね.言うのは簡単で実際にやることは難しい(自分も正直とれていると思えない)ですが,上に書いたような意味で数学オリンピックに全力で取り組んでください.

「数学オリンピックで」大事なこと

JMOの予選・本選・代表選抜を通過するために大事なこと,それは欠点をなくすことです.特にJMO本選では,2・3問目をいかに取りこぼさないかが大切です.どの分野の問題でも,その難易度感の問題はほぼ確実に解けるようにするのが望ましいです.

また,ごちすうの記事「JMO予選へのアドバイス 」「JMO本選へのアドバイス 」では詳しい内容を載せています.

最後に

この先日本代表になるまでアドバイスできることはあまりありません.演習を積んでいき,少しずつ力を付けていくしかないと思います.各々で頑張ってほしいです.

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