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最大値と最小値
更新日:2022-04-12

定義

最大値の定義を言えますか? 「最も大きい値」では数オリをやっていくうえで心もとないです. ここで定義を確認しましょう.

$A$ を $ \mathbb{R}$ の部分集合とする. $ x \in \mathbb{R}$ について,

ここで注意しておきたいのは $A$ が最大値, 最小値を持たない場合があることです. 定義の確認を兼ねて次の例題を置きます.

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よくある話

$ A = \{ x \in \mathbb {R} \mid x>1 \}$ の最小値は存在しないことを示せ.

$m$ を $A$ の最小値と仮定する. $ m’= \frac{1+m}{2}$ とすると, $m \in A$ より $m>1$ だから $1 < m’<m$ である. よって $m’ \in A$ かつ $m’ <m$ が成り立つが, $m$ が $A$ の最小値であることに矛盾する.

最大値・最小値の求め方

数学オリンピックでは「~をみたす何とかの最大値(あるいは最小値)を求めよ.」という形式の出題がよくあります. このような問題の多くでは次のような流れで問題を解きます.

解答には後者の要素が求められます. 逆にいうとそれさえあれば完璧な証明になるので $M$ をどうやって見つけたのかよくわからない天下り的なものもありえます.

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よくある話

$x$ を実数とするとき, $x^2-2x$ の最小値を求めよ.

コメント. 非常に簡単な問題ですが上で述べたような手順で証明を書いてみましょう.

$x=1$ のとき $x^2-2x=-1$ である. $x$ が実数ならば $x^2-2x=(x-1)^2-1 \geq 0-1=-1$ である. 以上より求める最小値は $-1$ である.

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多分よくある話

$5\times 5$ のマス目でビンゴをしている. タテ・ヨコ・ナナメのどれか $1$ 列がそろえばビンゴとなる. ビンゴが存在しないときの穴の数としてありえる最大値を求めよ.

ビンゴが存在しないとき, どのタテの列においても穴は $4$ 個以下存在するので, マス目全体の穴の数は $4 \times 5=20$ 個以下である. また, $(1,1), (2,2) \cdots , (5,5)$ のマス目以外に穴が開いている場合では, 穴は $20$ 個あり, なおかつビンゴが存在しない. 以上より求める最大値は $20$ 個である.

コメント. $5$ を正の整数 $n$ に置き換えた問題も解いてみよう.

最大値・最小値をとってくる

実数からなる集合 $A$ には常に最大値や最小値が存在するとは限りませんが, 最大値や最小値の存在が保証されている状況もあり, 重要です.

※ $A$ が下に(上に)有界であるとは, ある実数 $L$ が存在し, すべての $ a \in A$ について $ a \geq L( a \leq L)$ が成り立つことをいいます.

以上は当たり前の主張ではありますが, 最大値や最小値を自分でとって議論することがカギとなる問題はたまにあり, これを適切なタイミングで使うことは決して易しいことではありません. どうやったら使いこなせるかの指南は難しいのですが, まず, これが当たり前だけど有用な手法であることは認識すべきでしょう. Problems にもいくつか例があるので意識してみてください.

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有名事実

$a$ を整数, $n$ を正の整数として, ある整数 $q,r$ が存在し, $a=qn+r$ かつ $ 0 \leq r < n$ を満たすことを示せ.

$A = \{m \in \mathbb{Z} \mid mn \leq a \}$ とおく. $A$ は空でない. (例えば, $m=-|a|$ のとき, $ mn= -|a|n \leq -|a| \leq a$ である. ) また, $mn \leq a$ ならば $m \leq a/n $ が成り立つから, $A$ は上に有界である. よって $A$ には最大値が存在するので, それを $q’$ とする. $r’=a-q’n$ とすると, $q’ \in A$ より $qn \leq a$ だから $r \geq 0$ . また, $q’$ の最大性より $q’+1 \not \in A$ だから $ (q’+1)n >a$ であり, $r’ < n $. よって $(q,r)=(q’,r’)$ で条件がみたされる.

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有名事実

$a,b$ を正の整数とする. ある正の整数 $c$ が存在して $ A=\{ ax+by | x,y \in \mathbb{Z} \}$ は $c$ の倍数全体の集合になることを示せ.

$A$ は正の整数を含むから, $A$ の元であるような正の整数で最小のものが存在するのでそれを $c’ =ax’+by’$ とする. $m$ を任意の整数として, $c’m= a(mx’)+b(my’)$ より $c’m \in A$ である.

また, 任意の $A$ の元 $ax+by$ について, これを $c’$ で割った商を $q$ , 余りを $r$ とすると, $0 \leq r < c’$ が成り立ち, かつ, $r= (ax+by)-q(ax’+by’)=a(x-qx’)+b(y-qy’)$ より $r \in A$ である. $r >0$ を仮定すると, $r$ は $A$ の元である正の整数であり, $r < c’$ が $c’$ の最小性に矛盾する. よって, $r=0$が成り立ち, 任意の $A$ の元は $c’$ の倍数である.

以上より $A$ は $c’$ の倍数全体の集合である.

コメント $c’$ は $a,b$ の最大公約数です.