数学オリンピックの問題は,一般的に 代数(A)・組み合わせ(C)・幾何(G)・整数(N) の4つに分類されます.
もちろん分類が難しい問題,複合的な問題もありますが,IMO Shortlistなどではどの問題もいずれか1分野に分類されています.
A, C, G, Nといったアルファベットは,それぞれ
- Algebra, Analysis
- Combinatorics
- Geometry
- Number theory
の頭文字で,数オリ界隈では広く用いられています.
分野を知るメリット
例えば代表選考合宿では毎日3問,それが4日間行われますが,
- どの日の3問も違う分野である
- 1番級(各日で1問目に出題される問題)の4問は違う分野である
- 2番級,3番級も同様
という暗黙の了解があります.それを知っておくと,なんとなく解法が見えてくる場合があったりなかったりします.
注意
一見ある分野の問題に見えても,実は別の分野らしい解き方で解けることがあります. また,「こういった雰囲気の問題はこういう風に考える」みたいな,分野をまたがった考え方を身に着けるのも大切です.
分類にはメリット・デメリットがあることを理解すべきでしょう.
代数
説明が難しいのですが,方程式を解いたり,最大値・最小値を求めたり,不等式を示したりなど,何らかの式についての性質を,実数の性質などを用いて調べる分野です. サブジャンルとして不等式,数列,関数方程式などがあります.
実際に見てもらったほうが早いと思います.番号はごちすうのProblemsの番号と対応しています.
不等式
ある値がある値より大きいことを示すジャンルです.最大値・最小値を求める問題もそれに含まれるでしょう.
$n$ を正整数とする. $x_{1}, x_{2}, \ldots, x_{2n}$ を $0$ 以上 $1$ 以下の実数とするとき, $$(x_{2}x_{3}+x_{4}x_{5}+\cdots+x_{2n-2}x_{2n-1}+x_{2n}x_{1})-(x_{1}x_{2}+x_{3}x_{4}+\cdots+x_{2n-1}x_{2n})$$ の最大値を求めよ.
数列
数列の問題です.
$r$ を実数とする. 正整数からなる数列 $a_{1},a_{2},\cdots$ が, 任意の正整数 $n$ に対し以下の不等式をみたすとき, ある正整数 $M$ が存在し, 任意の正整数 $n\geq M$ に対し $a_{n+2}=a_{n}$ であるという. $$a_{n}\leq a_{n+2}\leq \sqrt{a_{n}^{2}+ra_{n+1}}$$ このような $r$ としてあり得る最大値は $r=2$ であることを示せ.
関数方程式
数学オリンピック特有に近い問題で,しばしば出題されています.ある条件をみたす関数を求める問題です. まず知るべきこと:関数方程式編 で詳しく解説されています.
実数に対して定義され実数値をとる関数 $f$ であって, 任意の実数 $x,y$ に対し \[ xf(y)+yf(x)\leqq xy\] をみたすようなものをすべて求めよ.
その他
上で挙げたいずれにも分類しにくい問題も出題されます.
$q$ を正の有理数とする. $2$ 匹のアリが初め平面上の同じ点 $X$ にいる. $n-1$ 分後 ($n=1,2,\cdots$) に各アリは東西南北いずれかの方向を選び, その方向へ $1$ 分間かけて $q^n$ 移動する. ある正整数 $k$ が存在し, $k$ 分後の $2$ 匹のアリの位置が一致し, かつそれまでの $2$ 匹の道筋が完全には一致していないとき, $q$ としてありうる値を全て求めよ.
組み合わせ
説明が難しいですが,ある条件をみたすようなものを数えたり,性質を調べたりする分野です.例題を見ていきましよう.
$m\geqq n$ を正の整数とする. サンタクロースは $m$ 個のプレゼントを持っており, $n$ 人の子どもたちにそのうち $1$ つずつを配りたい. $i$ 人目の子どもは, $m$ 個のプレゼントのうち, ある $x_i (\gt 0)$ 個から $1$ つが欲しいと思っている. $x_1,\ldots,x_n$ の逆数和が $1$ 以下であるとき, サンタクロースはすべての子どもたちの望み通りにプレゼントを配れることを示せ.
数学オリンピックではグラフ理論の問題がしばしば出題されます.詳細はごち数の記事「グラフ理論入門 」をご覧ください.
ある国は $n\geqq 2$ 個の都市からなり, どの $2$ 都市についてもそれらを双方向に結ぶ航空路線が開設されている. 政府はいくつかの航空会社に以下の条件をみたすようにこれらの航空路線を割り当てることにした:
- それぞれの航空路線は, ちょうど一つの航空会社に割り当てられる.
- どの $2$ 都市の組についても, 各航空会社に割り当てられた路線のみを用いて行き来できる.
このとき, 割り当てに関与できる航空会社の数としてありえる最大値を求めよ.
「組み合わせ幾何」と呼ばれるジャンルもあります.組み合わせに分類されることも幾何に分類されることもあります.
$n\geqq 4$ を整数とする. 平面上に相異なる $n$ 個の点があり, どの $3$ 点も同一直線上にない. これらの点を頂点とし, 面積が $1$ であるような相異なる平行四辺形の数を $A(n)$ とするとき, 以下の不等式を示せ. \[A(n)\leqq \frac{n^2-3n}{4}\]
幾何
正直あまり説明することはありません. 平面上(ごくまれに空間上)に点や直線や円があり,辺の長さや角度などを調べる分野です.
$AB\lt AC$ なる鋭角三角形 $ABC$ において, $A$ から対辺におろした垂線の足を $D$ とする. 点 $B’$ と $C’$ がそれぞれ半直線 $AB,AC$ 上にあって, $B’,C’,D$ が同一直線上にあり, $4$ 点 $B,C,B’,C’$ が点 $O$ を中心とする同一円周上にあるとする. 線分 $BC$ の中点を $M$, 三角形 $ABC$ の垂心を $H$ とするとき, 四角形 $DHMO$ は平行四辺形であることを示せ.
整数
整数に関する性質,例えば「割り切れる」といった関係などを調べる学問です.
まずはオードソックスな不定方程式の問題です.不定方程式は概ね「~~という式をみたす整数の組を求めよ」という形式です.
以下をみたす正の整数の組 $(x,y)$ をすべて求めよ.\[3^{x}+x^{4}=y!+2019\]
関数方程式が出題されることもあります.
素数に対して定義され素数値をとる関数 $f$ であって, 任意の素数 $p,q$ に対し \[f(p)^{f(q)}+q^{p}=f(q)^{f(p)}+p^{q}\] をみたすようなものをすべて求めよ.
次はゲームと組み合わさっている例です.
$p$ を奇素数とする. AnaとBenが以下のようなルールによってゲームを行う.
- $1$ 以上 $2p-2$ 以下の整数を交互に一つずつ選ぶ. ただし過去に二人のいずれかによって選ばれた数は選ぶことができない.
- すべての数が選ばれたら, 二人はそれぞれ選んだ $p-1$ 個の数の総積に $1$ を足すことで, 自らのスコアを計算する.
- 一方のスコアのみが $p$ で割り切れるときその人の勝利となり, それ以外の場合は引き分けとなる.
Anaが先に整数を選ぶ. 互いが常に最適に行動し続けるとき, ゲームの結果はどうなるか?